入れ歯を科学する≪vol.1≫なぜ入れ歯が外れるの?接着現象と吸着現象のお話
入れ歯を科学する≪vol.1≫なぜ入れ歯が外れるの?接着現象と吸着現象のお話
どうして私の入れ歯はうまく合わないんだろう…こんなに悩んでいる人、私以外いないんじゃないかしら?いえいえ、実は入れ歯で困っている方は世の中にはたくさんいらっしゃいます。でもちょっと恥ずかしくて、みなさん悩みを言えないだけです。入れ歯の名人に出会えたらいいですよね。でもどこにいるかわからないので相談もできません。ここではこれから4回にわたり、ちょっと科学的に理屈っぽく、入れ歯の悩みの原因を解き明かしていきます。まず1回目は「外れる入れ歯」です。
どうして入れ歯は外れるのでしょう?答えは維持力が働いていないからです。数本だけ歯を失った部分入れ歯の場合、残った歯に入れ歯の留め具をかけて外れないようにします。簡単に維持力が働くので、外れるというトラブルは少ないです。しかし歯が2、3本しか残っていないとか歯を全部失った総入れ歯だと、残った歯に維持力を期待することはできません。どうすればいいのでしょうか?接着現象と吸着現象によって維持力を生み出します。
接着現象とは2つの物質が接した時に生じる力です。入れ歯と歯ぐきが隙間なくぴったりと接することにより、接着力が働きます。さらにその間に唾液が介在して濡れることにより、より一層ぴったりと密着します。例えば2枚のクレジットカード同士合わせるとくっつきます。さらにそのカードが水で濡れていると、離れないくらいぴったりくっついた経験はお持ちでないでしょうか。
吸着現象とは、ある空間が真空状態になることで生じる力です。吸盤が壁にくっつくことはご存知でしょうが、正にそれです。実際に口の中が真空状態になることはありませんが、入れ歯と歯ぐきとがぴったりついて隙間の空気が抜け、さらにその周りを頬や舌など粘膜で包み込まれることによって、疑似的に真空のような状態が作り出されます。大気圧との圧力差を利用して、入れ歯の吸着力が生まれるわけです。
このように入れ歯が外れないようにするためには、維持力を発揮させる必要があります。つまりぴったりと歯ぐきと合っている入れ歯、言い換えれば接着現象と吸着現象が起きる入れ歯にすればいいのです。維持力自体は比較的簡単に発揮させることができます。ただその力を持続させ続けるのは少し難しくちょっとした治療技術が必要なのですが、それはまた別の機会で。