入れ歯を科学する≪vol.2≫痛い入れ歯の原因を探る 歯ぐきの圧負担能のお話
入れ歯を科学する≪vol.2≫痛い入れ歯の原因を探る 歯ぐきの圧負担能のお話
「痛っ!!」何度も調整してもらっているのに、入れ歯の痛みが取れないことありませんか?痛いって嫌ですよね。家族やお友達との楽しいはずの食事もついつい遠慮しがちになり、つまらない生活を送ることになってしまいます。2回目は「痛い入れ歯」についてのお話です。ただ痛みといっても、様々な種類と原因があり、ここだけではお話しきれません。そこで今回は特に入れ歯の痛みの出やすい「痛みの名所」について探っていきます。
実は入れ歯の痛みが出やすい場所はだいだい決まっています。上顎の後方の頬側の歯ぐき、下顎の舌側後方の歯ぐき、大きく骨が隆起している歯ぐきなどです。それらがいわゆる入れ歯の「痛みの名所」です。どうしてそこに痛みが生じやすいかというと、歯ぐきの圧負担能が低いからです。咬んだ時に入れ歯からかかる力を歯ぐきがどれだけ受け止めてくれるか、それが圧負担能です。歯ぐきの厚みはどこも一緒ではありません。歯ぐきを座布団に例えるなら、綿がたくさん入っていてフカフカ分厚い座布団の所もあれば、薄くてペラペラの座布団の所もあります。もうお分かりですね。分厚い座布団は圧負担能が高い歯ぐきで痛みが出にくく、薄い座布団は圧負担能が低い歯ぐきで痛みが出やすい箇所なのです。
圧負担能の低い部位は、薄い歯ぐきです。薄いためその下にある固い骨の影響を受けやすいのです。かたい床に座布団なしで直に正座したら痛いですよね。それと一緒です。そして歯ぐきの圧負担能を超えると傷が生じます。つまり歯ぐきが薄い場所こそが、傷になりやすい「痛みの名所」なのです。
圧負担能が低い部位は、解剖学見地からおおよそ決まっています。ですので歯医者さんは実際に口の中を触りながら「ここは痛くなりそうだな」と、解剖学知識と照らし合わせながら診断していきます。そして圧負担能が低そうな歯ぐきには入れ歯が強く圧迫しないように、あらかじめ緩衝スペースを設けて入れ歯設計をしているのです。実際には食事をすると想像以上に色々な方向から入れ歯の圧力がかかるため、どうしても調整が必要になります。ただし入れ歯から加わる力と歯ぐきの圧負担能のバランスが崩れないような入れ歯づくりを心がけています。そうしないととんでもなく痛い入れ歯になってしまうからです。