Step3 最終入れ歯製作開始
Step3-1.口腔内再現
いよいよ最終的な入れ歯の製作にとりかかります。治療用の入れ歯が仕上がっていたらそのまま最終入れ歯に置き換えていくこともあります。これまで一緒にがんばってきていただいていたので、比較的スムーズに出来上がります。
まず口の型取りからはじめていきます。ただし通常の入れ歯と違い、あなたの口にあった専用の器(個人トレーといいます)を使って型取りをしていきます。既成のトレーはつかいません。なぜなら既成のトレーだと型をとる材料の変形が大きくなるからです。
型取りの材料は厚みが大きくなればなるほど変形が大きくなります。なんども書きますが、ほんのちょっとの変形でも口は敏感に感じとるのです。型取りの材料もできるだけ寸法変化の小さい材料を使います。いろいろな素材の材料がありますが、口の隅々まで抵抗なく行き渡る流れのよいシリコンといわれる材料で型取るのが一番でしょう。
このように精密な型どりをして、あなたのお口を再現していきます。寸法変化なく、正確な模型で口に中を再現しないことには、良い入れ歯は絶対に出来ません。
Step3-2.顔面3次元計測
型取りが終わったら、咬合採得、入れ歯の高さ合わせです。咬合採得とは、歯が並ぶ平面や高さ決めです。歯をならべる位置や高さを3次元的に計測してかみ合わせを決めていきます。通常の入れ歯づくりでは、おそらく簡素化しておおよそのかみ合わせで決められることが多いでしょう。しかし解剖学に基づいた基準となる指標があるのです。良いかみ合わせにしていくためには、適切な位置決めをしなければなりません。
まず上あごの歯が並ぶ基準面を決定します。その際にカンペル平面というものを測定します。カンペル平面とは左右の耳の穴と鼻の下を結ぶ線と平行になるような平面です。横方向からだとその線、前方からみると左右の目を結んだ線と平行になります。この解剖学的な平面を基準にしなければいい入れ歯はできません。以前は必ずといっていいほど、この平面の測定をしていましたが、最近では省略されることが多くなってきたようです。しかし傾いた平面で歯をならべると、首が傾き、姿勢が悪くなる原因となります。
上あごの平面が決まったら、次は下あごの高さを決めていきます。ここでもいくつかの解剖学的な基準があります。ウィルス法といって、瞳孔から唇までの距離と鼻の下からあごまでの距離が同じという解剖学的な根拠から高さを求める方法もありますし、ブルノー法という、鼻の下からあごまでの距離と患者さんの手のひらの大きさが同じということを利用した高さ合わせの方法もあります。この他、マックギー法、ブヤノフ法、クロウホード法といった様々な方法があります。これらの方法を用いて高さ合わせをしていきます。
ただしあくまでこれらは参考値です。人間には好み、感覚、感性というものがあります。大きな鏡でお顔を見てもらい、ご自身の目で見て確認していただきます。解剖学的な計測値と感性を合わせることで、バランスのとれた理想のお顔にしていきます。もしよかったら昔の写真も持ってきてください。それも参考にしながら決定していきましょう。
Step3-3.人工歯選択
高さが決まったら、人工歯選択です。人工歯は1種類だけではありません。様々な大きさ、形、色があります。そのため、患者さんの性別、体格、顔つき、年齢、肌の色を考慮しながら、丸顔の人には卵円形の人工歯を、男性の方にはやや角ばった力強い感じのある人工歯を、といったようにあなたの個性にあわして選択していきます。
さとう歯科には、色調だけでも20種類以上、形態は200種類以上の人工歯を取りそろえています。これだけの種類があれば、実質選択肢に限りありません。さらにご希望でしたら、1つ1つ一からお作りする、完全カスタマイズの歯もあります。
Step3-4.表情づくり
歯並び、特に前歯ですが、ちょっとした並び具合が見た目や表情に大きく影響してきます。例えば前から見て自然な位置に並べたとしても、実際口に入れてみるとほんの少し後ろに位置してしまっていて、いわゆる「入れ歯顔」になってしまうこともあります。歯だけをみるのではなく、顔・目・鼻・唇のバランスが良くないと、美しい表情にはなりません。
そこで私は一本一本患者さんの前で、歯があった頃の自然な歯ならびをイメージしながら並べていき、その都度、あなたの口に入れて、鏡でみていただきチェックしていただきます。表情のある自然な感じの口元になれば、OKです。素敵な笑顔になることでしょう。患者さんの前で、鏡をみながら人工歯を並べる歯科医院はほとんどないと思います。この感性による表情づくりはとても重要なことだと思いますので、私はあえて患者さんの前で納得のいく歯ならびにしていきたいのです。
Step3-5.最終チェック試適
いよいよ完成への最終チェックです。ここでは主に奥歯のかみ合わせの確認をしていきます。あごを動かした時の、前歯、奥歯の当たり具合を、咬合紙というチェック用の紙を使って調整していきます。これはなんと8ミクロンの厚さです。ミクロンは1ミリの1000分の1です。ここまで薄い咬合紙を使われている歯科医はなかなかいません。髪の毛たった1本かんだだけでもわかる歯。口がスムーズに動き、変な歯のあたり方がないかをみて調整していくのです。